4
絶対絶命
~前回のあらすじ~
カイトとネロは姿を変えた魔物の攻撃を食らう瞬間、幼馴染のミサに魔法で助けられた。
ウォーターボール(ジャンボシャボン玉)で束の間の空中散歩を満喫するものの安心はしていられず、再び魔物に襲われてしまう。
そして、魔物の攻撃でカイトのウォーターボールに罅が入る。ざまあ
~絶体絶命~
その時、どこから飛んできたミサイルランチャーがオレのシャボン玉に当たり、卵が割れる様な嫌な音を立てて罅が入る。
オレのシャボン玉にミサイルランチャーが当たる度に罅が大きくなる。
その時、何故か敵の攻撃が止んだ。
諦めてくれたか?
オレは寝転んだまま、辺りを見回す。
くそっ。今度はなんだよ。
敵の攻撃が止んだのを確かめるとオレは眠気が一気に覚め、何事かと思い慌てて飛び起きた。
「おいミサ。なんでオレだけ罅が入るんだよ!?」
オレは拳を振り上げ、ミサに食ってかかる。拳が怒りで震えている。
ミサ。オレのだけ手加減したんじゃねぇだろうな。
オレの中で、そんな不安が過る。まさかな。
ミサは胸の前で両手を合わせて、可愛くぺろっと舌を出した。
「ごめんっ。カイトの分だけ、手加減しちゃった。ネロは特別だからね?」
ミサはネロにウィンクして、ネロにラブラブビームを送る。
オレはミサが信じられず、ミサを力強く指さす。
「はあ!? お前なに言ってんだよ!? ネロ、なんとか言ってやれよ!」
オレの指先が恐怖で震えている。手には嫌な汗を掻いている。
オレは救いを求める様にネロを見る。
ネロはミサを無視して、デジタル腕時計を弄りながら、黒縁メガネのレンズでどこからミサイルランチャーが飛んできたか必死に探っている。
ここはネロに任せるか。オレはミサに視線を戻す。
オレはミサの苛立ちで両手で頭を掻き上げる。
「おいミサ! オレのだけ手加減したのかよ!? お前それでも幼馴染かよ?!」
オレはまた力強くミサを指さす。やっぱりミサが信じられず指先が震えている。
今度は額に嫌な汗を掻いている。
ミサは肩を竦め不気味に微笑んで、鬱陶しそうに手をひらひらさせる。
「ネロとあたしは大丈夫だから。落ちるのはカイトね。短い間だけど、楽しかったわ。」
ミサは瞼を閉じ、指で涙を拭う仕草をして、胸の前で十字を切った。
こいつ、冗談じゃないな。本気だ。
オレはミサに呆れて、がっくりと肩を落とし俯く。
ミサに付き合いきれずに疲れて、そのまま深いため息が零れる。
「何か近づいてくるぞ! 油断するな!」
その時、ネロの怒声が響く。
「!?」
オレは一気に緊張して、驚いて顔を上げる。
素早くネロを見ると、ネロの黒縁メガネのレンズに表示された立体地図が赤く点滅している。
敵か。どこだ?
オレは辺りを見回す。さっき攻撃してきた奴か?
その時。けたましく鳴きながら、オレたちの向こうと反対側から飛んできた二羽の大鷲のような生物。
大鷲はメタリックの骨格に眼が紅く、両翼の先端が太い筒状になっており、長い尻尾が生えている。
二羽の大鷲は回転しながらオレたちに近づき、それぞれ口を開けるとガトリングガンがあり、二羽の大鷲は口を開けたままそれを撃ってくる。
オレのシャボン玉の罅がみるみる大きくなる。
くそっ。諦めたんじゃなかったのかよ。
何でオレだけなんだ。
オレは両手で頭を掻きながらミサとカイトを見る。
ネロを見るが、ネロのシャボン玉は攻撃を吸収して大丈夫みたいだ。
ミサはミサで、青白いバリアに包まれている。
ミサ、オレのだけ本当に手加減したのか?
オレは首を横に振る。そんなわけねぇ。
オレは両手の拳を握り締める。
「おい、なんとかしろよ!」
オレはミサとネロに訴える様に、シャボン玉の見えない壁を拳で叩く。
拳を額にくっつける。
オレは歯を食いしばって一羽の大鷲を睨む。
大鷲は勝ち誇ったように両翼を真っ直ぐ前に突き出し、その先端の筒からミサイルが発射された。
ミサイルの飛来音が風を切る。
オレは飛んでくるミサイルを見て舌打ちした。
今度はミサイルかよ。余計なことしやがって。
オレはシャボン玉の見えない壁を拳で激しく叩く。
くそっ。どうなってやがる。ここの魔物どもは。
ミサがシールドの手加減をしたとは思えねぇ。
じゃ何でなんだよ。
オレは諦めて両膝をシャボン玉の見えない床に突き、絶望に駆られ俯く。
「不味いぞ。ミサ、カイトをなんとかしろ!」
ネロの怒声が波の様に揺らいで聞こえる。
大鷲のミサイル攻撃がオレのシャボン玉に当たり、攻撃音が遠くに聞こえる。
なんとかならねぇのかよ。くそっ。
オレは両手の掌を床に突き、拳を握り締めて見えない床を叩く。
その間にも、オレのシャボン玉の罅割れが大きくなる。
オレの鼓動が高まり、緊張で息が荒くなる。
瞼を閉じた。落ち着け。とにかく考えるんだ。どうにかしないと。
しかし、オレのシャボン玉は攻撃に耐えきれず、ついにガラスが割れるように砕け散る。 オレの身体は吸い込まれるように宙に投げ出された。
「うわぁぁぁぁぁ!」
オレの身体が逆さまにみるみる急降下していく。
顔を上げると、ネロとミサが小さくなっていくのが見える。
オレは手を伸ばして掌を広げる。
「ネロ、ミサ……」
オレは小さく呟いた。
ついにネロとミサが点になり、見えなくなった。
オレの身体が地上に向けて急降下してゆく。
今度ばかりはダメかもな。オレは瞼を閉じる。
コメント
コメントを投稿